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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2017-05-04

ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に 最適なSSD を開発 〜 データの「価値」を判断する ことで、300 倍の長寿命化、26%の高速化に成功

CICCで発表したValue-Aware SSDに関してプレスリリースを行いました。

【概要】

中央大学 理工学部 教授 竹内 健のグループは、ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に最適な記憶デバイス(SSD)を開発しました。開発したSSD は画像データの「価値」を判定し、重要なデータは高信頼なメモリセル、重要性が低いデータは信頼性が低いメモリセルに記憶するように制御します。また、ディープラーニングを用いた画像認識では、認識精度が保てれば計算の精度は低くても影響しないことに着目し、読み出しの高速化と高い画像認識を両立する、メモリのエラーを訂正する誤り訂正回路(ECC)を開発しました。これらの制御技術の開発により、SSD の寿命(データの保持時間)を300 倍長寿命化し、SSD を26%高速化することに成功しました。

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2017-03-17

東芝のフラッシュメモリ事業をアメリカ企業に買ってもらい、「日米連合」という幻想

東芝のフラッシュメモリ事業は4/1に分社化され、東芝メモリという会社になるようです。

そして原発事業の損失の穴埋めのために、東芝メモリは完全に売却されると言われています。メモリ事業は現在絶好調の上、データセンタ用途の市場の拡大も期待されるため、売却金額は1.5-2兆円にもなると言われています。

これだけの高収益事業、しかも日本が生み出した製品ですので、むざむざと外資系にくれてやるのはもったいない。

こういう時こそ、政府系の金融機関、政策投資銀行や産業革新機構の出番ではないか、と主張し続けてきました。

これは決して東芝を「救済」するわけではなく、ましてや東芝本体の「再建」になるわけでもありません。

もう随分前から(10年以上前から)東芝のメモリ部門の独立というのは何度も取りざたされており、本来はとっくの昔に分社化・独立してIPOをすべきだったのです。

今回の政府系の金融機関やファンドから出資を受けるというのも一時だけのことで、1-2年くらいかかるでしょうがIPOによってExitを目指すべきでしょう。IPOにより「政府系金融機関の投資へのリターン」として国民にも利益を還元する。

ところで、東芝メモリの買収先を巡る報道で気になるのは、政府高官(って誰でしょう?)の話として、アメリカ企業に買ってもらいたい、日米連合、などという報道もされています。

候補となるマイクロンやウエスタンデジタル(WD)はいくつもの企業を吸収・合併してのし上がって来た企業です。

WDの現CEOのスティーブ・ミリガンなど、WDの幹部をやっていたのに辞めてライバルのHGSTに移ってCEOになり、その後HGSTをWDが買収した時にのし上がってWDのCEOになったツワモノです。

アメリカの半導体企業のトップなどこういう人達ですから、東芝メモリが買収されたら「日米連合」などになるはずありません。

マイクロンなどはメモリの開発拠点がアメリカにありますので、日本からはエンジニアのキーパーソンだけをアメリカに呼び寄せて技術を吸収し、日本は単なる製造拠点になってしまうかもしれません。

マイクロンに買収されたエルピーダメモリはそんな状態ではないですかね。

買収される側に何らかの主導権が残る、と思うのは多くの場合は幻想です。

外資系企業が買収する場合、買収先の企業の上の方のマネージャーはクビを切り、自社からマネーシャーを送り込み、買収先を支配することが普通です。決して連携でも連合でもありません。

買収した方からしたら、支配することが当然なのです。買収先が大企業であるほど、買収先の自由を許していたら、組織を統括できませんから。

だからこそ、東芝のメモリは外資系企業、特に同業他社には買収されてはいけない、と思うのです。

それは買収先の国籍によりません。買収先が中国や台湾がダメで、アメリカなら良い、という事ではないのです。

ですから、政策投資銀行や産業革新機構が東芝メモリに出資するのならば、東芝メモリの全株式の51%以上(つまりマジョリティ)を取って欲しいのです。

翻って東芝の原子力事業を考えると、買収したウェスチングハウス(WH)にそうした支配・統制をできなかったからこそ、WHの暴走を招き、現在のような悲惨な結末になってしまったのでしょうかね。

2017-02-17

東芝記者会見の異様な光景

かつての古巣の東芝のことが心配でもあり、産業界がしっかりしてくれないと大学で研究・教育をしていても仕方がないこともあり、東芝の記者会見はネット中継で見ています。

2/14の記者会見は異様なものでした。記者会見の内容は様々なところで報道されているので割愛しますが、まず質疑応答で、記者さんが「反省して下さい」「まだ隠しているんじゃないの」と怒っている。

年末の記者会見くらいから、東芝からメディアにきちんと会見の連絡さえすることができなくなり、業を煮やした記者さんたちが(勝手に)東芝に押し掛ける、ということが続いているらしい。

記者さんも人間です。企業と良好な関係があれば、記事も多少は好意的になるかもしれませんが、こうして関係が悪化してしまっては企業の方が損をしてしまいます。

実際に取材に来て下さる記者さんとお話しすると、記者さんも本当は東芝には立ち直って欲しいんだと感じます。東芝は日本を代表する企業ですし、取材で会う記者さんも、友達や知り合いに東芝に居る人も多いですから。

そして会見の内容も異様でした。

利益の8割を叩き出し、いわば一本足打法のフラッシュメモリを完全に売却することもあると発表。

東芝が発表したパワーポイントの事業の資料からはフラッシュメモリが「完全に消滅」していたので、事実上完全売却することを決めたのでしょう。

現在の東芝の時価総額が8000億円程度。フラッシュメモリ事業が独り立ちすると、1兆5000億円もの価値があるともいわれています。

単純計算すると、フラッシュメモリ以外の東芝の事業の価値は、-7000億円です。もちろん、コングロマリットディスカウントがあるので、こんなに単純ではありませんが。

いずれにせよ、一本足のメモリ事業を手放したら、大きく稼げる事業はありません。

しかし、社長さんは「廃炉や保守などの原発事業を継続し、社会的責任を果たす」と何度も強調。

企業にとって利益を叩き出すことは、社会的責任ではないのでしょうか?

もはや利益など眼中になく、原発事業を維持する目的の(国策?)企業になった、と社長自ら言っているように聞こえました。

そして社長さんの言い方も紋切型というか、投げやりで支離滅裂。

もはや社長さん自身が、自分が言っていることを信じてないのでしょうね。

考えてみればこの社長さんも、気の毒です。医療事業出身でありながら、突然、社長に祭り上げられて、「そんなに原発で責められても、自分は何も知らないし、関係ないよ」と思っているのでしょう。そう思っても社長という立場上、ひたすら頭を下げ続けなければいけない。

このようにもはや学級崩壊したような異様な記者会見を見て、東芝という企業の経営が機能しなくなっているように感じました。

社長さんは、「貸した金を返せ」という銀行に背中を突かれて、ひたすら事業を切り売りすることしか考えてないのかもしれません。

本当はアメリカのチャプター11のように、倒産を選んだ方が事業・従業員を守ることになるのでしょうが、借金を踏み倒されたらかなわない銀行としては、そんな思い切ったことができない「無難で良い人」を社長に選んでいるのでしょう。

電力事業については、様々なメディアで取り上げられているように、中国での原発事業の遅れ、ランディスギア(スマートメーター)の減損やLNGの買取契約など、まだまだ「地雷」が潜んでいると言われています。

稼ぎ頭のメモリ事業を失った後に、このような状況で東芝という企業が生き残れるのか・・・

ここまで追い詰められたら、何を残して、何を淘汰するのか、決断しなければいけない。

一連の原発問題で企業としては危機的状況ですが、好調な事業やその中で頑張る優秀な社員の方も残っています。

こうした事業や従業員の方を決して潰してはいけない。

今後の東芝の動向はどうなるのか。

記者会見では社長さんが「原発を維持して社会的責任」と述べていたように、どうも最優先は問題の原発・電力関係のようです。

これから本当に国は税金を投じて、東芝の問題事業を支えるのでしょうか?

もういい加減に、落ち目の問題事業に対して優先的に税金を投入するのはやめませんか。

例えば、産業革新機構は落ち目の企業の延命に税金を投入し続けたため、評判が悪かった。

東芝の場合は、ゾンビ化した原発事業には投資すべきではないでしょう。

一方、儲かっていて将来性もある東芝のフラッシュメモリ事業が身綺麗になって、外に切り出されるならば、産業革新機構は投資すべきではないでしょうか。

税金を投じるならば、リターンが期待できる、前向きな投資を考えて欲しいものです。

2017-01-15

中央大学 竹内研ではAI・機械学習に関するソフト・ハードの研究開発に従事する方を募集します。

竹内研では機構助教・研究補助員の公募を行うことになりました。

分野はAI・機械学習のソフト・ハードの融合領域です。

関心のある方は、ぜひ応募の方、宜しくお願いします。

以下、公募内容です。

●公募対象: 機構助教・研究補助員(1名)

●所属: 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 竹内研究室

●勤務地: 中央大学 理工学部 後楽園キャンパス(東京都文京区春日1-13-27)

●研究分野

1.脳型LSI(ニューロモルフィックLSI)

2.機械学習を高速・低電力に実行するAIアクセラレータ

3.AI/機械学習のアルゴリズムとプロセッサ・メモリ・ストレージなどのハードを融合したApproximate Computing

4.データの価値に応じてデータを保存するコグニティブストレージ

5.1000年記憶メモリと誤り訂正符号技術(ECC

 以上の1〜5のうち、1つまたは複数の研究に従事する。

 ハード・ソフトの境界領域の研究のため、専門外の方の応募も歓迎します。

 本人の希望・適性に応じて業務を決定します(上記の全てをやる必要は無い)。

●プロジェクト

NEDO「IoT時代のCPSに必要な極低消費電力データセントリック・コンピューティング技術の研究開発」プロジェクト、またはJST CREST「デジタルデータの長期保管を実現する高信頼メモリシステム」プロジェクトに従事。

●着任時期: 2017年4月以降できるだけ早期

●任期: 1年毎に更新。最長5年

●応募資格

2017年3月31日の時点で博士の学位を有する方あるいはそれに準ずる方。博士の学位が無くても産業界での経験がある方も歓迎します。

●応募期限

2017年3月31日必着。

詳しくは以下のwebページにアクセス下さい。

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D117010437&ln_jor=0

2017-01-03

あけましておめでとうございます

本年もどうぞ宜しくお願いします。

昨年から研究室の方向性をよりソフト、AI関係の研究にシフトさせて来ましたが、それをやり遂げるのが今年になります。

変わるかどうかを迷っている場合ではなく、いかに素早く変われるかが問われている勝負の年になりました。

古い分野にしがみついてジリ貧になるくらいならば、積極的に新しい世界に打って出た方が良い。

どうせ倒れるならば、のけぞってではなく、前のめりに倒れたい。

私自身としては今年はなんと50歳になってしまいます(ウンザリ)。変化が早い最先端の研究分野でそんなオッサンが新しい分野で価値を出せるかというところですが、オッサンはオッサンなりのやり方で変われることを証明したいと思います。

加齢は誰にでも訪れるものです。年を取ると若い時と同じやり方では通用しなくなる。

上の世代の方を見ると、50代、60代になっても新しい分野を切り拓いて活躍し続ける方もいれば、過去に素晴らしい実績を残しながら残念ながら研究者として全くダメになってしまう人もいる。

両者を分けている理由は正確にはわかりませんが、間違いなく差があるのは、やる気。

年をとっても活躍されている方は例外なく、年とともにエネルギーが増えていくように傍から見えます。

一方、ダメになってしま人は、過去の実績にすがりついたり極端に新しいことに取り組むことを拒否したり。一言でいえば、やる気がないように見える。

ならば、情熱さえ持ち続ければ、オジサンでも活躍できる場所はあるのではないか。

幸い新しいアイデアを考える力はまだ衰えていないと自分では思っています。学生にも恵まれており、自分が方向性さえ出せれば、新しい分野でも十分勝負になると思っています。

新しい分野に出ていくために、いろいろな方にご指導頂くことになるかと思いますが、どうぞご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願いします。

2016-12-25

自分の限界よりも、ほんのちょっとだけ頑張ってみる

クリスマスですね。大学生のころ、まだ研究室が立ち上がったばかりで自前で高額な装置を持てず、東大の駒場リサーチキャンパスにある先端研に実験装置を使わせに頂きに行っていました。学生の間では「出稼ぎ」と呼んでいました。今の駒場リサーチキャンパスは建物も建て替えられとても立派ですが、当時は生産研が移転する前でした。クリスマスは、人気のない寂れた建物の中にポツンとあるクリスマスツリーのライトアップを見ながら徹夜の実験。いったい何をやってるんだろう・・・と思ったものでした。そういった経験も今の自分にきっと役に立ってるんでしょうね。

ところで、大リーグ マーリンズのイチロー選手は毎年この時期に地元の愛知県で少年野球の大会を主催しているそうで、「第21回イチロー杯争奪学童軟式野球」での挨拶がちょっとした話題になっています。

21回も続けていることは素晴らしいし、そこからドラゴンズの田島選手、ベイスターズの関根選手とプロ野球の選手まで誕生しているとは凄いですね。

イチロー選手の挨拶を一部引用させて頂くと、

「今年メジャーリーグで3000というヒットを達成することができました。こういうことがあると、たくさんの人から褒めてもらえます。そして、イチローは人の2倍も3倍も頑張っていると言う人が結構います。

でも、そんなことは全くありません。人の2倍とか3倍頑張ることってできないよね。みんなも頑張っているからわかると思うんだけど。頑張るとしたら自分の限界…自分の限界って自分で分かるよね。

その時に自分の中でもう少しだけ頑張ってみる。ということを重ねていってほしいなというふうに思います。」(イチロー杯、大会長挨拶全文「自分の中でちょっとだけ頑張ってきた」より引用)

いきなり2倍、3倍と大きな目標をたてるのではなく、ちょっとだけ限界を超えてみる、そしてそうした努力を継続する、ということでしょう。

無理やり数値化すると、1年で10%成長できたとすると、10年で1.1の10乗になるわけですから2.6倍にもなるのです。1年で10%の成長を20年間続けたら、6.7倍に。

もちろん、継続的に努力し続けるのは難しいし、年々成長が難しくなるし、スランプになることもあるでしょう。

こうやって計算することは簡単でも現実は難しい。

自分に厳しく、限界を超える努力を続けられる点がイチロー選手が「天才」である理由でしょう。

その一方、凡人の私たちにもやってできないことではないかもしれない、とも感じます。

事実、私たちの生活を支える、エレクトロニクス・コンピュータはムーアの法則という「継続的なちょっとした努力」によって進化してきました。

ムーアの法則とは、集積回路LSI)を年々小さくすることにより、18ヶ月(1.5年)ごとに集積度(LSIに搭載されるトランジスタの数)を2倍にするというものです。

これは18か月ごとにトランジスタのサイズ(一辺)を約30%小さくすることに相当します。縦・横両方の方向に30%小さくすれば、0.7x0.7で面積は約半分になりますので。

ムーアの法則は物理法則ではなく、技術者コミュニティ・産業界の指針、目標です。

18ヶ月というと1つのプロジェクトを行うにはちょうど適切な期間で、その間に30%だけトランジスタのサイズを小さくしよう、そしてそれを継続しよう、というものです。

これならば凡人の自分たちにもできるような気がしてしまう。野心的過ぎず、簡単過ぎないちょうど良い目標だったと思います。

そしてムーアの法則こそ、イチロー選手が言う、「ちょっとだけ限界を超えよう、その努力をずっと続けよう」だと思いませんか。

こうしてエンジニアたちが継続的に「ちょっとだけ限界を超えてきた」努力の結果を見てみましょう。

私が生まれた年、1967年から40年後の2007年までのLSIの進化を見るため、1967年のメインフレーム(大型コンピュータ)IBM 7094と2007年のノートパソコンを比べます。

・CPUの性能:0.25MIPSから4000MIPSへ「16000倍向上」

・メインメモリ(DRAM)の容量:144KByteから1GByteへ「6900倍向上」

・価格(2003年当時の物価に換算):2億円から20万円へ「1000倍安くなった」

つまり、コストパフォーマンスでいえば、40年間で約一千万倍向上したわけです。

これは年々約50%向上(1.5の40乗が約一千万)したことになります。

ムーアの法則は数多くのエンジニア、研究者が達成したことですので、単純にイチロー選手のような個人の業績とは比較できません。

ただ、いきなり「40年で一千万倍にせよ」と言われたら達成できたでしょうか? むしろ、毎年ちょっとだけ向上させる、ということならばエンジニアもできるような気がする。そして、激しい競争と市場の拡大により「ちょっとした向上」が何十年も継続され、結果として凄まじいばかりの業績を成し遂げてしまったわけです。

こうした事例は実はいろんな分野であるのでしょうね。

新年になると一年の目標を立てる方も多いと思います。あまり過剰な目標にするよりは、ちょっとだけ今までの自分を超えてみる。そしてそれを毎年続ければ、10年後、20年後にはとんでもなく成長しているのではないでしょうか。

2016-12-11

ムーアの法則の終焉により、エンジニアにとってもゲームのルールが変わった

先週、電子デバイス分野のフラグシップの学会であるIEDM(International Electron Devices Meeting)に参加してきました。

以前のIEDMと言えば、トランジスタの微細化の話ばかりでしたが、ムーアの法則が終わりつつある現在、発表される論文の分野が随分変わりました。

医療向けのセンサであったり、機械学習を高速化・低電力化する技術であったり、脳の機能を模擬した脳型LSIであったり、多種多様な応用に向けたLSIの技術が発表されました。

ムーアの法則が続いていた時には、トランジスタを小さく作る、高速化することでCPUを高速化・高集積化したりメモリを大容量化するなど、共通のゴールに向かって世界中の技術者が凌ぎを削っていました。

そうした技術開発もまだ残ってはいますが、それに加えて今では各人がそれぞれ自分が決めたゴールに向かって走り出していると感じます。

IEDMで会った大学の研究者の多くが研究分野を変えていました。分野を変えなければ、研究費を確保することが難しかったのでしょうね。

分野を変えてうまくいった人だけが生き残り、(旅費を工面して)学会に参加できているのかもしれません。

知り合いの研究者と会っても、「どうしてお前、そんな研究やってるんだ?、全然違う分野なのに成果を出して凄いね」、「いやうまくやっているように見えても実際は大変でね・・・」といった苦労話になります(もちろん英語で)。

世界の半導体産業の競争の中で凋落した日本に居ると、半導体デバイスから研究分野を変えるのは、当たり前です。

そうでなく、半導体産業の競争に勝ったアメリカや台湾などでも、ムーアの法則が終焉することで、ゲームのルールが変わってしまったのです。

その結果、技術者・研究者も分野を変えざるを得なくなった。

例えば、元々CPUなどロジックLSIの専門家だったエンジニアがメモリの研究に移り、そしてメモリスタなどのメモリデバイスを使った脳型LSIの研究に移る。

ムーアの法則が続き、将来の技術のロードマップを描けていた頃は、研究開発も縦割りに細分化され、その道のスペシャリストとして専門分野を極めることが技術者・研究者にとって重要でした。

ところが今では、自分が持っているコアとなる強い技術を活かせるゴールを探し、目標を定める。そして、ゴールに到達するために、ハードのみならずソフトの開発も行ったり様々な分野の専門家を巻き込み、プロジェクトを運営する能力が重要になっています。

ロードマップができていない新しい分野では、単に画期的なデバイス・ハードを作っただけでは、最終的なユーザーに使ってもらえません。

新しいハードを使いこなすソフトやインタフェースの規格を自ら作ったり、ソフトの研究者を巻き込むことが必要になります。

新しいアプリケーションを目指す場合は、まさに違った土俵に登る必要があります。例えば医療向けのLSIを開発するのであれば、実験を行うにしても個人情報保護やセキュリティ、倫理面など様々な問題を克服しなければいけません。

ムーアの法則の時代では直線を速く走る能力が必要だったのに対し、ポスト・ムーアの時代では、障害物競走、あるいは道なき荒野を自ら切り拓き、サバイブする能力が必要になった、と言えるかもしれません。

日本の半導体産業では、経営がマズかったから負けたけれど技術では負けていなかった、というようなことも言われます。

それも間違えではないのでしょうが、ムーアの法則の終焉は、私たちエレクトロニクスのエンジニアにとって、ゲームのルールが抜本的に変わることを意味していると感じます。

こうした変化をプラスに考えると、巨額な投資が必要な大規模な組織戦から、比較的小規模な投資の個人戦、エンジニアの個性や能力がそのまま結果につながりやすくなった、と言えるかもしれません。

集団で研究開発することが苦手だったり、大組織の中に埋もれていた個性的な技術者・研究者にとっては朗報かもしれませんね。

2016-11-13

AIで再び活気が出てきた半導体と立ち遅れる日本

ここ最近の科学技術で盛り上がっている分野と言えばAI(人工知能)でしょう。新聞を見れば見出しにAIと書いてないことは無いくらいですし、碁や将棋でAIがプロに勝ったことなどもあり、「AIが人の仕事を奪う」といった議論も良く聞きます。

ただ、AIは大容量のデータを検索したり画像を認識するといった特定の分野では人間以上の能力があっても万能ではありません。

例えば言語の認識(自然言語処理)では人間のようにAIは文脈の意味を理解しているわけではありません。

人工知能「東ロボくん」 東大を断念

という記事にも書かれているように、AIでできることの限界も明らかになって来ました。

そもそも、東大合格を目指した「東ロボくん」プロジェクトは、AIの限界を明らかにするためにやられているのではないですかね。

こうしてそろそろAIに対する過剰な期待もなくなり、ブームも終わる事でしょう。

その一方、半導体業界ではAIが流行し始めました。

AIのアルゴリズムは日進月歩ですが、ある程度アルゴリズムが決まってくると、次は実用化に向けていかに高速・低電力・低コストにAIを実現するか、というところが勝負になって来ます。

今までソフトによって実装されていたAIの機能を専用の半導体のハードウエア(AIアクセラレータ)で実現することにより、高速化、低電力化しようという研究が最近とても盛り上がってきているのです。

こうしてソフトが盛り上がった後に、市場が拡大にするにつれて専用のハードウエア(LSI)が登場する、というのはAIに限らず良くあることです。

先週、東芝からプレスリリースがあった、「ディープラーニング(深層学習)を低消費電力で実現する脳型プロセッサを開発」もそういったAIアクセラレータの一つです。

会計問題で世間を騒がせた東芝ですが、次の事業に向けて新しい技術が出てきたことに私もほっとしました。

また、昨年はグーグルがAIのアクセラレータを発表して注目を集めました。

米Googleが深層学習専用プロセッサ「TPU」公表、「性能はGPUの10倍」と主張

自社のサービスのために使うとはいえ、グーグルが半導体業界に参入してきた、とも言えます。

ディープラーニングでは膨大な量の積和計算を行う必要があります。この積和計算は人間のニューロンにおいて、他のニューロンのシナプスから入力した刺激を、ニューロン同士の結合の強さに応じて受け取ることを模擬したものです。

現在使われているAIではこの積和計算をGPU(グラフィックス・プロセッサ)などの従来のデジタル回路で実現しています。

一方、AIアクセラレータでは、積和演算などのAIの計算に最適化したデジタル回路で実現するもの(おそらくグーグルのTPUもこのタイプ)、先ほどの東芝の発表のように、アナログ回路あるいはメモリ技術を活用するものなど様々なLSIが提案されてきています。

こうしてAIによって半導体・LSIの回路設計分野が再び活気を取り戻していますが、残念なことに日本の影が薄い。

エルピーダメモリの破綻やルネサスエレクトロニクスの経営難などにより、日本では半導体に携わる人は産業界だけでなく大学でも肩身が狭い立場です。

半導体分野から他の分野に移ったエンジニア・研究者も多いのではないでしょうか。

しかし、一度技術が失われてしまうと、再び重要になったからと言って、急に技術を立ち上げ先行者に追いつくことは容易ではありません。

私自身も最近は(かつての専門の)LSIの回路設計の研究をトーンダウンさせていました。

しかし、技術は失われると取り戻すことは簡単ではないので、細々ではありますが、回路設計の研究をずっと続けてきました。

このように評論している場合ではなく、既に遅きに失しているかもしれませんが、私もAIアクセラレータの研究に参入しようとしています。コアとなるアナログ技術やメモリ技術は自分の得意分野とはいえ、既にブームになってしまっている今更の参入ですから相当大変です。

事業や産業構造は激しく移り変わり、選択と集中が良しとされる社会ではあります。しかし、こうして再び半導体の研究が活性化すると、時代が変わっても捨ててはいけない技術というのはあるのだと思い知らされました。

現在の日本の大学ではLSIの回路設計に携わる研究者は随分減ってしまいました。

時代が変わっても何を維持すべきか、判断は難しいところですが、私自身は回路設計をやめないで細々とでも維持してきて本当に良かったと思っています。

AIへの応用という、再び注目される応用がこんなにすぐに出現するとは予想できませんでしたが。

2016-10-30

11/4(金)-6(日) 中央大学白門祭で竹内研の一般公開を行います。後楽園キャンパスにお越し下さい!

今年も早いものでもう11月になりますね。来週の週末、11/4(金)-6(日)に中央大学白門祭で恒例の竹内研の一般公開を行います。是非、後楽園キャンパスにお越し下さい!

公開場所は2号館8階2844号室(プロジェクト室)と1号館地下1階1034号室(実験室)です。アクセスマップは研究室のHPをご覧ください。

現在のIT革命を牽引してきたのはトランジスタの微細化ですが、微細化のスピードが減速し、いわゆるムーアの法則が終焉しつつある今、微細化に頼らないアルゴリズムやアーキテクチャの革新が求められています。その一つがAI(人工知能)になります。

竹内研では、

・AIを利用する

・AIのアルゴリズムに適したコンピュータを作る

・AI自体を作る

という3つの方向からAIの研究に取り組んでいます。まあ、AIという言葉の定義自体が曖昧ですが。

白門祭ではAIも含めた最新の研究動向をご紹介したいと思います。

2016-10-20

女性も進路に迷ったらとりあえず理工系に進んでおけば良いのでは

ハフィントンポストにインタビュー記事が掲載されました。

実はいいことづくし。 これからの時代に「女子が理工系に進むべき」7つの理由

IoT(Internet of Things)と言われるように、流通・金融・医療・農業など様々な業界にITが使われる時代になりますので、どんな仕事をするにしても、ITの理解は必要になります。

もっともIT・技術だけで食べていくことは難しくなっているので、技術だけやっていれば良いわけではないです。ただ、若い時には理工系で数学や物理などの基礎的な知識や技術を学ぶのはキャリアのスタートしては悪くないのではないでしょうか。

私は30歳を超えてからスタンフォード大学に留学してMBAコースで金融や経理などビジネスの基本を学びました。

技術だけでは実際のビジネスで勝ち残るのは難しいわけですが、留学した時にも学ぶ順番としては、頭のやわらかい若い時には(年をとってからでは理解が段々難しくなる)理数系を学んでおくのが良いと感じました。

MBAコースの学生は社会人として企業などで実務経験がある人ばかりですが、MBAに留学した時、同級生の業界は様々でしたが、出身学部は2/3以上が理系でした。

これは「とりあえず若いうちは理工系で学んでおこう」ということなのでしょうね。

IoTの時代では、理工系の学部に進学したからと言って、みんながメーカーに就職する時代でもなく、就職先も(かつては文系と思われた)様々な企業に広がっています。

ですから就職先とそのために必要なスキルを分けて考えても良いのではないでしょうか。

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