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見聞読考録

2013-10-05

『震える牛』

震える牛

相場英雄(著)


ここに書かれていることは過去に実際に起きた痛ましい事件の暗示かもしれない。

あるいはこれから起こる暗い未来の予言かもしれない。


そう思えるほどに、現代社会の闇を生々しく描写している。


“幾度となく、経済的な事由が、国民の健康上の事由に優先された。秘密主義が、情報公開の必要性に優先された。そして政府の役人は、道徳上や倫理上の意味合いではなく、財政上の、あるいは官僚的、政治的な意味合いを再重要視して行動していたようだ”


上記は、この小説の冒頭で引用されている、エリック・シュローサー(Eric Schlosser, 1959/08/17-, アメリカのジャーナリスト)の著書『ファーストフードと狂牛病』の文章。この小難しい文章を、誰にでもわかるように、現実よりもリアルに、何よりも雄弁に、描き直されたものがこの『震える牛』という小説だといえるだろう。


“直面している大きな課題は、市場の道徳観念の欠如と効率性とのあいだで、しかるべき落としどころを探ることだ。事由を謳う経済システムは、しばしばその事由を否定する手段となってしまう。二十世紀の特徴が全体主義体制との闘いであったとすれば、二十一世紀の特徴は行き過ぎた企業権力をそぐための闘いになるだろう。極限にまで推し進められた自由至上主義は、おそろしく偏狭で、近視眼的で、破壊的だ。より人間的な思想に、取って代わられる必要がある”


“そもそも消費者とは、われわれ全員のことだ。この国最大の経済的集団であり、どんな経済的集団であり、どんな経済決定にもことごとく影響を受ける。消費者は重用視すべき唯一の集団である。しかし、その意見はないがしろにされがちだ。政府はいかなるときも、消費者の|里蕕気譴觚⇒、∩ぶ権利、0娶を聞いてもらう権利、ぐ汰瓦魑瓩瓩觚⇒を擁護しなくてはならない”


現代社会の闇に目をつむり、大人の嘘を鵜呑みにしてしまう、楽観的で馬鹿正直なあなた(俺もか?)には、ぜひ読んでいただきたい。


世の中、「知らなかった」では済まされないことがある。

知らないということは、ただそれだけで、時に罪深い。


アフリカで起こっている紛争の実態。中国で起こっている迫害の実態。メキシコで起こっている麻薬戦争の実態。東南アジアで起こっている森林破壊の実態。日本のコンビニやファストフード店で起こっている食品廃棄の実態。あるいは、原子力ムラの実態。

知ったところでどうにもならない、と人は言うかもしれないが、知れば誰でも嫌悪するこれらの問題を、誰も知らないままに解決することは絶対にできない。


何も知らないままに安穏と生きていられないこの世界を、非常に不愉快に思う。だが同時に、このような救いのかけらもない真っ黒な事実を勇気をもって直視することこそが、この世界に生きる人間の最低限の義務なのかもしれない、と思うようになってきた。


本書はその「真っ黒な事実」の一部を、エキサイティングかつ安全に案内してくれるだろう。

逆に、エリック・シュローサーの上の文章を完全に理解できる人にとってはただの娯楽にしかなり得ないかもしれない。そのような方に本書を勧める理由は特にない。


この相場英雄という人物、小説家の他にジャーナリストとしても活動しているようだ。

『震える牛』とも関連した記事がこちらのサイトで読める。


相場英雄の時事日想


見聞読考録 2013/10/05

2013-06-19

『旭山動物園のつくり方』

旭山動物園のつくり方

原子禅(著)


旭山動物園の華々しい成功とその裏に秘められた努力と苦悩の物語。そのへんに置いてあったので読んでみた。どうすれば人が動くか、どうすれば世界を変えられるか、そのヒントが秘められているように思う。


2012年度の年間来館者数160万人超。日本一の人気を誇る有名動物園だが、ここまでの道のりは平坦ではなかったという。

1994年、エキノコックス症が園内の動物に発症。一時閉館を余儀なくされる。翌年再開するも来館者はそれまでの最盛期の半分にも満たない、28万人に留まった。旭川市議会では旭山動物園不要論も持ち上がったらしい。

旭山動物園の今の姿は、いったいどうやって形づくられたのか。


"やっていることは以前からまったく変えていないし、これからも変わらない" -p4

日本一の来園者数は、長年の取り組みの結果だということだ。


背景にあるのは、"失敗を怖れない" ということ。"怖くても挑戦を止めない" ということ。飼育する動物を基準に設計されたが故にあまりに奇抜で、業者がついにはさじを投げるような建物を、「園が全ての責任を取るから」と言って、作らせてしまうこともあるというからすごい。公営の施設なのに、である。挑戦することに対して、全員が積極的でなければできない離れ業だ。形骸化した仕組みに疑問を投げかけ、自由な発想を尊重する素晴らしいやり方だ。研究やビジネスの世界にも通ずるものがある。


例えば、日本人がノーベル賞を受賞すると、日本中がお祭り騒ぎになる。すごいすごい、と囃し立てる。来園者数が多い、工夫を凝らした新施設が良い、と囃し立てられる旭山動物園の状況によく似ている。

でも、考察するべきはそこではないだろう。なぜ来園者数が増えたのか、なぜ新施設に工夫を凝らすことができたのか、という背景こそ、考えるべきことなのではなかろうか。ノーベル賞の受賞者の苦労話も聞く価値はあるけれども、そういう人間が成長した過程、つまり受賞したときから遡ること数十年前の研究環境や、その発想力の原点といった背景こそ、考えるべきことだと思う。世間ではそれが不足している気がする。


そこを考えることなしに、第二の旭山動物園は生まれないし、次代のノーベル賞学者は育たない。目の前の数字に惑わされず、本質を見抜く能力が求められる。


ただ、最後の旭山動物園の園長だか誰だかの対話記録みたいなの(p119~)は、ちょっと怪しい感じがした。ので、まともに読んでない。


見聞読考録 2013/06/19

2013-04-25

『兵隊を持ったアブラムシ』

兵隊を持ったアブラムシ

青木重幸(著)


"社会生物学 Sociobiology" という学問がある。その名の通り、生物の社会行動の機能や進化的なメカニズムを扱う。親が子を守るのはなぜか、群れはどのようにしてできるのか。そういう問題を扱う分野である。

その中でも、巨大なコロニーを作り、カースト分化を起こす社会性生物は、社会生物学の花形と言って良いだろう。そのような生物を真社会性生物という。代表的な真社会性生物の例として、アリやハチ、シロアリなどが分かりやすい。女王がいて、ワーカー(労働者)がいて、兵隊がいる。時期により雄も出現し、次世代の女王が巣立つ。だいたいこんなシステムが、典型的とみて良いだろう。こんな説明では専門家が見たら怒り出すかもしれないが。近年では、それ以外にもハダカデバネズミ、テッポウエビなんかも真社会性をもつことが分かっている。


特筆すべきは、典型的な真社会性生物では、女王以外の個体が子孫を生産しないということである。生物を生物たらしめている一要素ともいえる自己複製を、ワーカーや兵隊が放棄しているようにみえる。このことが、長らく多くの科学者を悩ませて来た。種の起原を記し、自然選択説を唱えたダーウィン(Charles Robert Darwin)も、ついにはその謎に適切な答えを与えられずにいる。今でこそ、多くの知見が得られている真社会性のシステムだが、その昔、真社会性生物の存在は、その存在自体が大きな謎だったのだ。

かの有名なハミルトン(William Donald Hamilton)が血縁選択説を提唱し、現在でも多くの人々に指示されるもっともらしい説明を与えたのは、1964年のこと。ダーウィンの時代から実に100年近くも解かれずにいたということになる。それほどの難問だったといえるだろう。そして、ハミルトンによる血縁選択説は、今なお議論の対象になるほどの大きな論争を科学界に引き起こした。


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さて、前置きが長くなった。『兵隊を持ったアブラムシ』の著者、青木重幸博士は、アブラムシ類でも真社会性が存在することを最初に発見した、業界では知られた超有名人だ。本の内容は、青木さんの行った研究と数々の大発見を綴った自伝といえる。お隣さん曰く、「数ある自伝の中でも最高傑作」とのこと。


で、早速読んでみたわけだが、、これは本当にすごい。34歳という若さで書かれた内容とはとても思えない。


まず何より研究内容がすごい。タイトルにもあるアブラムシの兵隊の発見、幹母(アリでいう女王)による定住型と分散型の子の生み分けと分散型の分散のメカニズムの解明(面倒なので説明略)、アブラムシにそっくりな形態を持つ捕食者の発見。Nature,Science 級の研究成果をバンバン出している。あまりの成果に、ハミルトンが感激し、青木さん個人宛てに手紙まで出しているということからも、そのすごさが分かるというものだ。


加えて面白い。30年も前に出された本とは思えないほど、新鮮に感じられる。学生時代の失敗、新しい考えに至るまでの経緯、大発見をしたときの興奮。研究論文には決して表れない裏舞台が赤裸々に語られている。研究の酸い甘いがギュッと凝縮されたような一冊だ。


また研究意欲を刺激されるという点も特筆に値する。これまで、どちらかというと社会性昆虫というものがあまり好きではなかった。アリとかハチなんかと野外で見ていると、社会性であるが故の反則的な強さが卑怯に思え、げんなりしていたのだと思う。そのげんなり具合は、実際に虫採りをしてみればわかる(もちろんアリやハチを採りにいくのであれば話は別だ)。昆虫を探してわくわくしながら倒木を起こす。そんなとき、そこにアリがびっしりとついていたりすれば興ざめだ。

そんな僕でも、社会性アブラムシの面白さに魅了され、気づけば真社会性昆虫の世界に引き込まれていたのだから驚く。それほどまで魅力あふれる著作だった。そしてついには、自分でもこの生き物を研究してみたいと思わされてしまった。


最近、これと似たような本をたくさん読んでいるような気がする。前に紹介した細将貴さんの『右利きのヘビ仮説』や、これから紹介する(予定の)前野ウルド浩太郎さんの『孤独なバッタが群れるとき』と丸山宗利さんの『アリの巣をめぐる冒険』などはまさに青木さんの著作と同じく、若くして書かれた自伝といえよう。どの著作からも、それぞれに独自に、それぞれに信念をもって研究に取り組んでいる様子がうかがえる。成果だけ見ても、いずれも相当なものだ。本当に良い刺激になる。


そういう研究者に自分もなりたい。


見聞読考録 2013/04/25

2013-04-07

マクロレンズな日曜日

ついにミラーレス一眼を買ってしまった。


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選んだのは、Panasonic LUMIX DMC-GH2

最近、後継機 GH3 が出たこともあって、だいぶ安くなっていた。高かったけれども、お得感たっぷりなお買い物。


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2011年の中国での調査の前日に購入した愛機、RICOH の GX200 は素晴らしい働きをしてくれている。けれども、画像を拡大したときなんかに、やっぱりコンデジの限界を思い知らされ、物足りなさが募ってきていた。欲望ってのはそうやって、抑えられなくなっていくものなんだろう。


最後に後押しをしたのは、コレかな。

僕もこんなふうな写真を撮りたい!と、ついに我慢ができなくなった、というわけだ。


それはそうと、この『アリの巣の生きもの図鑑』、ものすごく良い。毎年毎年呆れるほどたくさんの図鑑が出版されるこの日本において、他と一線を画す個性的な図鑑だと思う。

まず、写真のクオリティが異常に高い。クシケアリヤドリバチがシワクシケアリの運ぶ幼虫に飛びながら卵を産みつける瞬間とか、体調 2mm ほどのアリクイノミバエがクロオオアリに寄生する瞬間とか、ミツバアリの女王がアリノタカラをくわえて結婚飛行に飛び立つ瞬間とか、そんな信じられないような決定的な写真が惜しげもなく載せられている。

それから、著者陣が著者陣だけに、とても信頼できる。第一著者の丸山宗利さんの他の著作『アリの巣を巡る冒険』を途中まで読んだが、分類学者とはこういう人達のことか、と思い知らされた。好蟻性昆虫(アリと関わりのある昆虫たち)、特にハネカクシ類に、世界で最も詳しい人に違いない。分類学者とは、つまりそういう人達ということだろう。そんな人達が書いた図鑑が信頼できないわけがない。必然的に、それぞれの解説も素晴らしかった。

さらに、日本国内だけでなく、世界をも見据えている点も良い。日本語で書かれた解説のすぐ下に、英語での解説も書かれている。世界中の人に、しかも未来永劫に渡って色褪せることなく、読み継がれる名著になるのではなかろうか。

最後に、コラムも面白い。これだけ個性的な若手の研究者が書いているのだからそれこそ面白くないわけがない。著者のうちの一人、「俺」さんとは、僕も話したことがある。向こうは覚えていないかもしれないが。


曰く、

結局昆虫撮影で最後に物を言うのは虫に関する知識と経験、さらに各人が生来もつ「虫と通じる能力」(これを「フォース」と呼ぶ)の質だ.肝心の被写体発見能力なくして、撮影も糞もない.

とのこと。


写真一枚で、世界が仰天する、なんてことは科学の世界にはザラにある。走査型トンネル顕微鏡を使って原子を並べて書かれた文字の写真とか、去年の NHK スペシャルで放送されたダイオウイカの映像とか。

写真というものは、科学的に有力な証拠となりうるのだ。


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チャンスを確実にものにするためには、準備を怠らないことが重要だ。生物の見せる一瞬の振る舞いを確実に捉えるために、写真の腕を日々磨いておくのも悪くないだろう。それから、「虫と通じる能力(=フォース)」を最大限に引き出す努力も。


そんなことを考えながら、市場に出回るマクロレンズのラインナップを眺め妄想を膨らませた雷雨の日曜。まさにマクロレンズな日曜日。


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あまりに浮かれすぎて大事な用をすっぽかした。

うわーこれはヤバい。


見聞読考録 2013/04/07

2012-10-24

『ミレニアム1』

ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女

スティーグ・ラーソン(著)


見聞読考録 2012/10/24

2012-04-24

『右利きのヘビ仮説』

右利きのヘビ仮説ー追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化

細将貴(著)


著者の細将貴さんは以前、僕と同じ研究室に所属していた。その先輩が単著の本を出版したのは、今年の2月のこと。


本を手に取ったのは3月の中頃のことだったか。読み切るまでに3日とかからなかった。これほどまでにのめり込むように本を読んだのはいつぶりだろう。

僕が本を読むペースには周期性がある。寝ても覚めても読書に耽る時期と、ほとんど本に手をつけない時期とを、いつからか繰り返している。この『右巻きのヘビ仮説』の本を読むまでの数ヶ月は本を読むペースの遅い時期が続いていた。しかし、この本をきっかけにまた読書熱が再発したようだ。次から次へと新しい本に手が伸びる。旅の間はさすがに控えたものの、ここ7日間で3冊の単行本を読んでしまった。昨日も書店に並ぶ本を購入する衝動を抑えきれず、5冊もの単行本を手に大学生協のレジに並ぶ自分に呆れたばかりだ。困ったものである。きっかけを意識したことはこれまでなかったが、今回は明らかにこの本が原因だ。面白い本との出会い(と、おそらくは面白くない本との出会い)が、僕の読書の周期性を形成しているのかもしれない。


内容は詳しくは書かないが、簡単に言えば、カタツムリしか食べないヘビと、その捕食から逃れるために進化したカタツムリの話。・・・表題のまんまだな。

でもこの本の面白いところは、その現象の面白さに留まらず、それを考えたとき、証明したときの、経緯や感動までが事細かに書かれていることだ。主人公である著者の苦楽を追体験するような、小説的な要素が含まれている。しかも、研究者らしい簡潔な文章で、コネタまで挟んで。

学術的に面白い、あるいは、読み物として面白い、という本は多いが、その両方を達成している本はそれほど多くないと思う。そんな本に出会ってしまっては、こうして書き留めておかずにはいられない。


僕が今の研究室に所属してから3年の間に、研究室にいた先輩のうち2人が単著の本を出したことになる。もう1人は、『怪物狩り』を出版した小塚拓也さんだ。

ジャンルは異なるが、どちらも素晴らしい本だ。意欲的で、躍動感あふれる、面白い作品だ。本当に面白い。ぜひいろんな人に読んでもらいたい、と僕が思うまでもなく、どちらも十分に売れているんだろうと予想する。


身近な人が、それも年齢の近い人が、本を書くというそれだけで、自分にとって良い刺激になる。自分がもし本を書くとすれば、それはいつになるだろう。そもそも書けるだろうか。


自分には小説は書けないだろう。それほどまでの文才も想像力も持ち合わせてはいない。

経験、あるいは冒険に基づくノンフィクションはあるいは可能かもしれない。これまでに経験した、無謀な冒険やドジな失敗はそれなりに多い方だと自負している。でもそれでも、『怪物狩り』には適わない。同じジャンルでは、遥かに見劣りすることを避けられない。

よって、もし本を書くとすれば、学術的な専門書か、『右巻きのヘビ仮説』のような一般書か、いずれにしても今の研究に基づいた本ということになろう。低い可能性の中ではそれが一番ありそうに思える。


その点を鑑み、この『右巻きのヘビ仮説』の本は自分を焦らせた。当たり前のことだが、サイエンスのような専門性の高い内容で優れた一般書を書くことは、同じ内容で専門書を書くことよりも遥かに難易度が高い。一般書と専門書では目を通す人の数が違う。専門的な内容を一般書として出版するためには、誰もが理解できる言葉で、退屈しない文章で、満足できる内容を書く必要がある。この本は間違いなくそれを達成していた。

自然現象を説明する仮説を観察や実験によって検証しようとする自分のスタンスは、著者によく似ていると思う。だからこそ、悔しいと思う気持ちを抑えられない。これを超える本を書けるだろうか、と自問する。無理だ。考えるまでもない。


・・・少なくとも今の僕には。


見聞読考録 2012/04/24

2012-02-05

『風の中のマリア』

風の中のマリア

百田尚樹(著)


ミツバチの研究をしている友人に教えてもらった本。たしか昨年7月に買って読んだ。昨年7月の文庫化を待ちに待った記憶がある。


この小説、主人公はなんと Vespa mandarinia。あの嫌われ者のオオスズメバチである。そのワーカーの一生を擬人化して描いたという、不思議な小説だった。スズメバチを主人公にした小説なんてこれまでにあるのかなぁ。


大体において、これまでに知られている科学的な知見にきわめて忠実に書かれていた。登場人?物が人間的な発想をしている点においてのみ不自然さを感じたが、それはそれで独創的で悪くない。


それに、スズメバチ事情にもちょっとだけ詳しくなれるのもいいところ。こんな↓図とか出てきちゃうんだから、百田さんはよく勉強してる。

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これまでに読んだ百田尚樹の本。

永遠の0(ゼロ)


こちらもお勧め。舞台は、第二次世界大戦中の日本。主役は、零戦の厭戦的な凄腕パイロット。戦争について深く考えさせられる良本。


百田さんの文章を上手いとは思わない。いや、お前が言うな。

だけど、『マリア』も『0』も内容が挑戦的ですごく良い。どういうテーマでどういうものを書こうと思ったのかが明確に伝わってくる。他のも読んでみようかな。


見聞読考録 2012/02/05

2010-11-13

『砂漠』

砂漠

伊坂幸太郎(著)


またやってしまった。これだから、伊坂幸太郎は困る。


今日はこんなことをやるために徹夜したのですか?あなたはどれほどまでに目の前の誘惑に弱いんですか?西嶋の声が聞こえるようだ。


しかし、物事はなかなか思うようにはいかないもの。


生きていくのは、計算やチェックポイントの確認じゃなくて、悶えて、「分かんねぇよ、どうなってんだよ」と髪の毛をくしゃくしゃやりながら、進んでいくことなのかもしれない。


北村もいいこというよね。


これまでに読んだ伊坂幸太郎の本。

オーデュボンの祈り

ラッシュライフ

陽気なギャングが地球を回す

重力ピエロ

アヒルと鴨のコインロッカー

チルドレン

グラスホッパー

死神の精度

魔王

終末のフール

陽気なギャングの日常と襲撃

フィッシュストーリー


こう見ると、文庫化された作品は全部読んだらしい。暇だね、我ながら呆れる。しかし、「オーデュボンの祈り」と「重力ピエロ」は暇じゃない人にもお勧めしたいところ。

読みたい人がいたら、貸しましょう。


見聞読考録 2010/11/13

2010-10-30

『怪物狩り』

怪物狩り

小塚拓矢(著)


研究室の先輩が本を出した。すごいことだ。

そしてなんと、その本をいただいてしまった。ほっといても買ったのに!!

・・・こうなれば宣伝せねばなるまい。


こんな怪魚(やつ)がまだ地球にいて

こんな男(やつ)がまだ日本にいたんだ。

衝撃のファイトにでっかい拍手。


僕が何を書くよりも、帯に書かれた椎名誠の言葉が、内容を的確に表現していると思う。ってか先輩と椎名誠は知り合いなのだろうか?個人的にはそこが一番気になるのだが。。


肩入れしている分を差し引いても、か な り レベルの高い本だと思う。


まず、内容が面白い。一言で言ってしまえば、世界中の怪魚を釣り歩いた冒険談なのだが、最初から最後まで決して飽きさせない濃密な内容になっている。研究室にも来ずに何をしているのかと思えばこんなすげぇことをしてたのか。なんとうらやましい。

そういえば何度か旅先から電話をもらったりしたな。えらくタイムラグがあるなと思えば「今コンゴ」とか言い出すし。まさか自分の携帯にコンゴからの国際電話がかかってこようとは予想だにしなかった。

そもそも、これだけの冒険をできる人間が日本にいるだろうか?世界中見渡したってなかなかいないんじゃなかろうか?この本の面白さはこの無謀さにあるといえるだろう。こんな無謀な冒険をしたというただそれだけで、尊敬に値する。真似しようとしたってなかなかできるもんじゃない。まず真似したくないけど。


写真やイラストが多いのも素晴らしい。見たことも想像したこともないモンスターが次から次へと現れる。写真を眺めているだけでも楽しい。釣り好きの人だけでなく、万人が楽しめる本だと思う。


ただ真面目に生きていては学べないことがたくさんあると、改めて実感させられた。唯一つ惜しむらくは、ヒレのひとかけらでも研究用のサンプルとして持ち帰ってくださらなかったことか。。


見聞読考録 2010/10/30

2010-07-19

『パズル・パレス』

パズル・パレス

ダン・ブラウン(著)


ダ・ヴィンチ・コードで一躍有名人となったアメリカの人気作家、ダン・ブラウンのデビュー作。先の泉ヶ岳で時間を持て余しているうちに読み終えてしまった。


どの作品もそうだが、著者の歴史・宗教・言語・国際情勢に関する知識量には舌を巻く。まるで映画を観ているような語り口も良い。気づくと寝る間も惜しんで読んでしまう。ちょっと感情的な局面が多いのが個人的には残念なところ。


これまでに読んだダン・ブラウンの本。

ダ・ヴィンチ・コード

天使と悪魔

デセプション・ポイント


2010/07/19 見聞読考録